手元供養のやり方|まだそばにいてほしい人へ、始め方と必要なものを解説

つい数日前まで一緒に笑っていた人が、いま目の前で風呂敷に包まれた箱の中にいる。
寂しくて、つらい。
今朝、夢の中に出てきてくれて、優しく微笑んでくれた。
目が覚めたとき、
「あぁ、あの人とくだらないことで笑い合う日常は、もう戻ってこないんだ」
と、ようやく実感が湧いてきて、あれから初めて泣いた。
目の前には、あの人の遺骨が入った骨壺がある。
そのそばには、火葬場で受け取った一枚の許可証。
「埋葬許可証」と書かれている。
これを見ていると、次は納骨しなければならないような気がしてくる。
四十九日が終わったら納骨するものだと、周囲の人は言うかもしれない。
いつまでもそばに置いていたら、自分だけが前に進めていないように感じるかもしれない。
でも、今はまだそばにいてほしい。
そんな気持ちから手元供養を考える人もいます。
手元供養には、決まったひとつの形があるわけではありません。
遺骨を小さな骨壺に納める方法もあれば、写真や花と一緒に自宅で供養する方法もあります。遺骨の一部だけを手元に残すこともできます。
この記事では、手元供養の始め方、必要なもの、置き場所、遺骨を自宅に置く場合の法律上の扱いまで順番に解説します。
まずは、自分に合う形を探してみてください。

手元供養とは?故人を身近に感じながら供養する方法
手元供養とは、故人の遺骨の全部または一部を身近な場所で保管しながら供養する方法です。
「手元供養」という名前から特別な作法があるように感じますが、その形はさまざまです。
代表的なのは、次のような方法です。
- ミニ骨壺に遺骨を納める
- 写真や花と一緒に自宅で供養する
- 小さな仏壇を使う
- 遺骨の一部を納めたアクセサリーを身につける
- 一部を手元に残して、残りをお墓などへ納める
お墓や実家の仏壇がある場合でも、手元供養を組み合わせることはできます。
たとえば、遺骨の大部分はお墓へ納め、一部を自宅に残す方法です。
お墓へ行かなければ故人を想えないわけではありません。
毎日の暮らしの中にも、故人を想う場所をつくることができます。
手元供養にはどんな方法がある?
「手元供養をしてみよう」と思っても、最初は何をすればいいのか分からないかもしれません。
まずは、どんなふうに故人を身近に感じたいのかを考えてみましょう。

ミニ骨壺で供養する
もっともシンプルなのは、遺骨を小さな骨壺に納める方法です。
一般的な骨壺よりコンパクトなので、棚やチェストの上にも置きやすく、専用のスペースを大きく取る必要がありません。
故人の写真のそばに置くこともできます。
写真や花と一緒に祈りのスペースをつくる
棚やチェストの一角を、故人のための場所にする方法もあります。
写真と骨壺を置き、花を一輪添える。
故人が好きだった小物を置いてもいいでしょう。
仏間がなくても、暮らしの中に小さな祈りの場所はつくれます。
小さな仏壇で供養する
写真や骨壺、花などをひとつの場所にまとめたい場合は、小さな仏壇を使う方法もあります。
棚の上に置けるタイプなどもあり、大きな仏壇を置けない住宅でも取り入れやすくなっています。
どんな仏壇があるのかについては、後ほど詳しく触れます。
遺骨アクセサリーを身につける
ペンダントなどの内部に、ごく少量の遺骨を納める方法です。
自宅だけでなく、外出するときにも故人を身近に感じられます。
紛失や破損の可能性があるため、保管方法や扱いには注意しましょう。
手元供養のやり方|5つの手順で始める
方法が分かったところで、実際に手元供養を始める流れを見ていきます。
STEP1 どのくらいの遺骨を手元に残すか決める
最初に考えるのは、遺骨をどのくらい手元に残すかです。
主な選択肢は、
- 遺骨をすべて自宅で保管する
- 一部だけを手元に残す
- ごく少量をアクセサリーなどに納める
の3つです。
「手元供養をする=すべての遺骨を自宅に置く」というわけではありません。
お墓へ納めることも考えているなら、一部だけを手元に残す方法があります。
家族や親族にも供養についての希望がある場合は、この段階で話をしておくと後の行き違いを防ぎやすくなります。
STEP2 置き場所を決める
次に、どこで供養するかを考えます。
特別な仏間がなくても構いません。
リビングなら、日々の生活の中で自然に故人を身近に感じられます。
静かに手を合わせたいなら寝室。
スペースが限られているなら、棚やチェストの一角でも十分です。
ただし、骨壺を置く場所は、湿気や長時間の直射日光を避けます。地震や接触による落下も考えて、安定した場所を選びましょう。
STEP3 供養の形を決める
置き場所が決まったら、その場所に合った方法を選びます。
「遺骨をそばに置ければいい」なら、ミニ骨壺だけでも始められます。
写真や花も飾りたいなら、小さなスペースを整える。
外出するときも身近に感じたいなら、遺骨アクセサリーという方法もあります。
先に商品を探すより、「どんなふうに供養したいか」を決めてから必要なものを選ぶ方が迷いにくくなります。
STEP4 必要なものを揃える
手元供養だからといって、仏具一式を揃える必要はありません。
写真と骨壺だけから始めることもできます。
そこに必要に応じて、花立てや香炉、おりんなどを加えていきます。
特定の宗派の作法に沿って供養したい場合は、必要な仏具や配置が異なることがあります。菩提寺がある場合は確認しておくと安心です。
STEP5 自分の暮らしに合う形で続ける
場所ができたら、自分なりの方法で故人を想います。
毎日お線香をあげる人もいれば、花を飾る人もいます。
写真に話しかけるだけの日があってもいいでしょう。
毎日決まったことをしなければ、手元供養にならないわけではありません。
無理のない形の方が、長く続けやすくなります。
手元供養に必要なものは?最初から全部揃えなくていい
手元供養について調べると、ミニ骨壺だけでなく、おりん、香炉、花立て、ろうそく立てなど、さまざまな仏具が出てきます。
どこまで揃えるべきか迷うところですが、必要なものは供養の仕方によって変わります。
最初は、
- 遺骨を納めるもの
- 故人の写真
- 花
くらいから考えてもいいでしょう。
お線香をあげたいなら香炉を加える。
おりんを鳴らしてから手を合わせたいなら、おりんを加える。
使わない仏具まで形だけ揃える必要はありません。
特にマンションでは、線香の煙やろうそくの火が気になることもあります。
暮らし方や住宅事情に合わせて選びましょう。
写真と骨壺だけでは少し寂しいと感じたら
最初は写真と骨壺だけで手元供養を始めてみた。
それで十分だと思っていたけれど、毎日目にしているうちに、
「もう少し、この人のための場所を整えてあげたい」
と感じることもあります。

そんなときは、小さな仏壇も選択肢のひとつです。
最近は、昔ながらの大型の仏壇だけではありません。
棚やチェストの上に置けるもの、明るい木目のもの、扉を閉じると家具になじむものなど、現代の住宅で使いやすいタイプもあります。
仏壇を置くかどうかは、手元供養を始めるときに決めなくても構いません。
写真と骨壺だけで過ごしてみて、やはりひとつの場所にまとめたいと思ったときに考えても遅くありません。
小さい仏壇の種類や価格、選び方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
遺骨をずっと自宅に置いても大丈夫?
手元供養を考えるうえで、もうひとつ気になるのが遺骨の扱いです。
冒頭に出てきた、火葬後に受け取る許可証。
そこに「埋葬」という言葉があると、
「この遺骨はお墓へ納めなければならないのでは?」
と思うかもしれません。
ここでは、自宅で遺骨を保管することと、遺骨を埋めることを分けて考えます。
墓地、埋葬等に関する法律では、埋葬または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域で行ってはならないと定められています。
簡単にいうと、
骨壺に入れた遺骨を自宅で保管することと、自宅の庭などへ遺骨を埋めることは同じではありません。
墓地ではない場所へ遺骨を勝手に埋めることはできません。
一方、「火葬後○日以内」「四十九日まで」といった納骨期限が、この法律で一律に決められているわけではありません。
そのため、納骨せずに自宅で遺骨を保管しながら供養するという選択があります。
将来、お墓や納骨堂へ納める可能性もあるので、火葬後に受け取った許可証などの書類は大切に保管しておきましょう。
遺骨の一部だけを手元に残すこともできる
「お墓には納めてあげたい。でも、全部いなくなってしまうのは寂しい」
そんなときは、遺骨の一部を手元に残し、残りをお墓などへ納める方法もあります。
いわゆる「分骨」です。
手元に残した遺骨は、ミニ骨壺などで保管できます。
ただし、その遺骨を将来別のお墓や納骨堂へ納める場合には、分骨した遺骨であることを証明する書類が必要になることがあります。
分骨を予定している場合は、火葬場や墓地・納骨堂の管理者に必要な手続きを確認しておくと安心です。
全部を手元に置くか、全部を納骨するか。
その二つだけが選択肢ではありません。
手元供養を始めるとき、家族とも話しておきたい
自分にとって大切な人は、ほかの家族にとっても大切な人です。
遺骨を手元に残したいと思ったら、その気持ちを家族にも伝えてみましょう。
「まだそばに置いておきたい」
という人もいれば、
「お墓へ納めてあげたい」
と考える人もいます。
特に遺骨を分ける場合は、あとから行き違いが起きないよう、できる範囲で話し合っておきたいところです。
少し落ち着いたら、将来のことも
手元供養を始めたばかりのときに、何十年も先のことまで考えるのは難しいかもしれません。
少し気持ちが落ち着いたときで構いません。
自分が高齢になったらどうするか。
施設などへ入居するときはどうするか。
自分自身が亡くなったあと、遺骨をどうしてほしいか。
最終的にお墓や納骨堂へ納めるのか、永代供養など別の方法を選ぶのか。
希望が決まったら、家族に伝えておくと、将来判断する人の負担を減らせます。
手元供養についてよくある疑問
ここでは、ここまでで扱っていない疑問を取り上げます。
実家に仏壇があっても、自宅に祈る場所をつくっていい?
実家に仏壇があっても、自宅に故人を想う場所をつくることはできます。
実家から離れて暮らしていれば、日常的に仏壇へ手を合わせることが難しい場合もあります。
自宅では写真を飾ったり、小さな祈りのスペースをつくったりして、自分の暮らしに合った方法で故人を偲ぶことができます。
夫婦それぞれの家族の写真を一緒に置いてもいい?
限られた住宅スペースの中で、夫婦それぞれの両親や祖父母を一緒に供養したいと考える家庭もあります。
宗派や家族・親族の考え方によって受け止め方が異なることはありますが、自宅の祈りの場所をどうつくるかについては、家族で納得できる形を探していくことになります。
ペットも同じ場所で供養していい?
一緒に暮らしてきたペットを、家族と同じ場所で偲びたい人もいます。
人とペットを同じ場所で供養することについては、宗派によって考え方が異なる場合があります。
宗教上の形式を重視する場合は寺院などへ確認し、家庭での手元供養であれば、家族が納得できる形を考えてみてください。

手元供養は「まだそばにいてほしい」から始めてもいい
大切な人を亡くしたあと、周囲の日常は思っていたより早く元に戻っていきます。
仕事が始まり、買い物へ行き、いつものテレビ番組が流れる。
自分も少しずつ、以前と同じ生活に戻っていく。
それでも、ふとした瞬間に、
「あの人はもういないんだ」
と気づくことがあります。
四十九日を迎えたからといって、その寂しさまで一区切りつくとは限りません。
いつか、
「そろそろお墓に納めてあげようかな」
と思う日が来るかもしれません。
ずっと手元で供養したいと思うかもしれません。
今は、まだ分からなくてもいい。
大切な人を亡くしたばかりなのですから、これから先のことまで今日決める必要はありません。
今はまだ、そばにいてほしい。
そう思うのなら、しばらく一緒にいる。
手元供養は、そのために選べる供養のひとつです。
